1. はじめに:シリーズの趣旨と静岡県編の位置づけ
本シリーズでは、地域ごとの産業廃棄物収集運搬業許可制度の違いや実務上の注意点を掘り下げ、現場で役立つ情報を提供しています。今回は、東海地方の要所であり、政令市を2つ抱える静岡県を取り上げます。
2. 静岡県の申請制度の特徴
静岡県は、申請窓口が地域によって異なるほか、財務審査において独自の運用が見られるなど、実務者にとって「一筋縄ではいかない県」と言えるでしょう。特に建設業者の申請が多い地域であるため、現場感覚に即した対応が求められます。
- 申請窓口の分散:静岡市・浜松市は政令市として独自の窓口を持ち、それ以外は主たる営業区域を管轄する健康福祉センターが対応。
- 完全予約制:申請・相談ともに事前予約が必須。曜日・時間帯が限定されているセンターもあるため、早めのスケジュール調整が重要。
- 手引書の未整備:県としての「申請手引き」は発行されておらず、事務取扱要領を読み解く必要がある。
- 財務審査の厳格さ:債務超過や赤字決算がある場合、中小企業診断士の診断書や経営改善計画書の提出が求められる。
3. 令和7年度の主な変更点
2025年4月1日改正の事務取扱要領により、以下の点が変更されました:
- 執行役員の確認方法:社内資料による確認が可能に。
- 支配人の権限証明書の提出不要化。
- 水銀含有廃棄物の記載削除:該当事業者が存在しなくなるため。
- 一部廃止の届出扱いへの変更:収集運搬業・処分業の一部廃止が変更届で対応可能に。
これらの変更は、書類作成の簡略化や実務負担の軽減につながる一方、制度理解のアップデートが求められます。
4. 実務者が気を付けたいポイント
- 変更申請でも油断禁物:静岡県では、変更申請であっても財務審査を含む全体の見直しが行われるため、赤字や債務超過があると追加書類が必要になる。
- 事業目的の記載確認:法人申請では、定款や登記事項証明書に「産業廃棄物処理業」の記載が必要。目的変更には株主総会や登記手続きが伴う。
- 申請スケジュールの逆算:予約取得に時間がかかるケースもあり、許可取得まで2か月以上かかることも。余裕を持った計画が不可欠。
5. 現場での気づきと工夫
- 事前相談の活用:財務状況に不安がある場合、事前相談で感触をつかむことができる。決算書や試算表を持参すると効果的。
- 診断書・計画書の質が鍵:債務超過や赤字でも、内容の充実した診断書や改善計画があれば許可取得の可能性は十分ある。専門家との連携が重要。
- 地域ごとの管轄確認:市をまたぐ営業の場合、どの地域を「主たる営業区域」とするかで窓口が変わる。事前確認を怠らないこと。
6. おわりに:次回予告と読者へのメッセージ
静岡県編では、財務審査の厳しさと窓口の分散という二大特徴を中心にお届けしました。
産廃収集許可の手続きの流れについてはこちら、静岡県の申請について詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
次回は、農業・観光・工業が混在する「山梨県編」を予定しています。山間部での収集運搬業の実務や、県独自の審査基準に迫ります。